FUJITSU Cloud Service K5
IaaS 設計・構築ガイド(デザインパターン・実装サンプル集)

K5 DB(Oracle)パターン


要求事項

K5 IaaS と K5 DB(Oracle) を用いてサービスを構築したいといった要求事項に対応するパターンです。

  • K5 IaaS と K5 DB(Oracle) を接続する際の基本的な方法を把握したい
  • 安全に仮想サーバを操作し、サービスを構築・保守したい
  • 安全に仮想サーバを利用したい



対応するK5デザインパターン概要

このパターンでは、K5 DB(Oracle) の基本的な利用方法として、指定したIPアドレスからのみアクセス可能とし、他のIPアドレスからの侵入を防ぐ例を記載します。
具体的には、以下のように、K5 IaaS 上でのセキュリティを高める構成やアクセス制御機能と、K5 DB(Oracle) のアクセスルール機能について記載します。

  • K5 IaaS 内の仮想サーバからのアウトバウンド通信のみを許可します。インターネット側からのインバウンド通信は不可とします。
    そのため、仮想サーバにはグローバルIPアドレスは割り当ては不要です。
  • 外部接続ルータに割り当てられたSNATのグローバルIPアドレスを、K5 DB(Oracle) のアクセス許可元に設定します。
    これにより、K5 IaaS 内の仮想サーバからのみアクセス可能になります。
    なお、SNATのグローバルIPアドレスは、仮想ルータの作り直しもしくは仮想ルータのゲートウェイ設定(external_gatewayの設定)の再設定を行わない限り、変わることはありません。



構造 (イメージ図)



実装サンプル

1.作業概要

 (1) 作業順序
   下図に、作業順序①~⑫を提示します。作業順序①~⑫ごとの作業手順は、「(2) 作業手順」をご覧ください。
   なお、ここで記載しているIPアドレスや構成はサンプルです。利用者の環境に合わせて変更してください。

IPアドレス 本資料での設定値 備考
内部ネットワークのサブネット 192.168.1.0/24 サブネット作成時に入力します。
デフォルトゲートウェイ(仮想ルータ) 192.168.1.1 サブネット作成時、仮想ルータのインタフェース設定時に入力します。
仮想ルータに割り当てらるグローバルIPアドレス 133.162.191.1 仮想ルータのゲートウェイ設定時に割り当てられます。
仮想サーバ作成時に割り当てられるプライベートIPアドレス 192.168.1.10 仮想サーバ作成時にDHCPで割り当てられます。
KB DB(Oracle)に割り当てられるグローバルIPアドレス 129.191.1.1 K5 DB(Oracle)のサービス・インスタンスの作成時に割り当てられます。



 (2) 作業手順

No作業対象手順主な設定内容、および留意事項
K5 DB(Oracle)サービス・インスタンスの作成K5 DB(Oracle)ポータルから、サービス・インスタンスを作成します。
作業については、関連資料 「FUJITSU Cloud Service K5 DB powered by Oracle® Cloud ユーザーズ・ガイド  第2部 サービス・インスタンス編 」の「サービス・インスタンスの作成」を参照してください。
K5 IaaS新規プロジェクトの作成K5ポータルから、プロジェクトの作成を行います。
作業については、「開発・本番プロジェクトパターン」 の 「プロジェクトの作成」を参照してください。
また、プロジェクトの作成を実施するにあたり、新しく追加するユーザがいる場合や、権限を一括で管理したい場合は、「開発・本番プロジェクトパターン」 の 「ユーザの作成」、または 「グループの作成」を参照してください。
K5 IaaS外部接続用仮想ルータの配備K5ポータルから、外部ネットワークと内部ネットワークを接続するためのルータを配備します。
作業については、「インターネット接続パターン」 の 「ネットワークの作成-仮想ルータの作成」 を参照してください。
K5 IaaSゲートウェイの設定K5ポータルから、仮想ルータと外部ネットワークを接続します。
作業については、「インターネット接続パターン」 の 「ネットワークの作成-仮想ルータにゲートウェイ設定」 を参照してください。
K5 IaaS内部ネットワークの作成K5ポータルから、内部ネットワークを作成します。
作業については、「インターネット接続パターン」 の 「ネットワークの作成-内部ネットワークの作成」を参照してください。
K5 IaaSインタフェースの追加K5ポータルから、外部接続用仮想ルータと内部ネットワークを接続します。
作業については、「インターネット接続パターン」 の 「ネットワークの作成-仮想ルータにサブネットをアタッチ」を参照してください。
K5 IaaSセキュリティグループの設定K5ポータルから、セキュリティグループを作成します。
作業については、「インターネット接続パターン」 の 「セキュリティグループの設定-セキュリティグループの作成~セキュリティグループ利用時の注意事項」を参照してください。
設定例については、本資料「(1)セキュリティグループの設定」を参照してください。
K5 IaaSファイアーウォールの設定APIを利用して、ファイアーウォールの設定を行います。
※グローバルIPアドレスの割り当てを行っていないため、インバウンド通信は発生しませんが、より安全性を高めるため、設定することをお勧めします。
作業については、「セキュリティグループ/ファイアーウォール併用パターン」 の 「ファイアーウォールのルール設定手順-ファイアーウォールルールの作成~ファイアーウォールポリシーを仮想ルータに適用」を参照してください。
設定例については、本資料「(2)ファイアーウォールの設定」を参照してください。
K5 IaaS仮想サーバの作成K5ポータルから、仮想サーバを作成します。
作業については、「インターネット接続パターン」 の 「キーペアの作成、及び仮想サーバの作成」を参照してください。
※このパターンでは、グローバルIPアドレスの割り当ては不要です。
K5 IaaS仮想サーバにログイン作成した仮想サーバに対して、下記の方法で接続します。
 1) お客様の端末からリモートデスクトップで接続する。
 2) K5ポータルから「コンピュート」⇒「仮想サーバ」画面で、
   「Action」⇒「リモートコンソールを選択して、接続する。
※2)の方法で接続する場合は、リモートコンソール機能の対応ブラウザをご利用ください。
K5 IaaS仮想ルータに割り当てられるグローバルIPアドレス確認接続した仮想サーバからグローバルIPアドレス確認サイト等へアクセスして、仮想ルータに割り当てられるSNAT用のグローバルIPアドレスを確認します。
※外部接続ルータ/ファイアーウォールに割り当てられたSNATのグローバルIPアドレスは、K5 IaaSのダッシュボードやAPIでは確認できません。
作業については、本資料「(3)仮想ルータに割り当てられるグローバルIPアドレス確認」を参照してください。
K5 DB(Oracle)アクセスルールの変更K5 DB(Oracle)ポータルから、作成したサービス・インスタンスのアクセスルールを変更します。
作業については、関連資料 「FUJITSU Cloud Service K5 DB powered by Oracle® Cloud ユーザーズ・ガイド 第2部 サービス・インスタンス編 」のアクセスルールの変更を参照してください。
設定例については、本資料「2.設定例」の「(4)作業手順⑫アクセスルールの変更」を参照してください。



2.設定例

 (1) 作業手順⑦セキュリティグループの設定
  (a) 仮想サーバの設定やインストールに必要な設定例

No
方向
IPバージョン
プロトコル
ポート
宛先
備考
1送信IPv4tcp80
0.0.0.0/0
仮想ルータに割り当てられるグローバルIPアドレスの確認や、SQL*PLUS等のインストール、OSのセキュリティパッチを配布するサーバへのアクセス等のために設定します。
※設定やインストール後に、0.0.0.0/0 に対する 80/tcp の送信のルールを削除してもかまいません。
ただし、削除する場合には、代わりに以下の設定を必ず追加してください。
仮想サーバ起動時に、仮想サーバは以下のIPアドレスから仮想サーバの起動に必要な情報を取得するため、以下の設定は必須の設定です。
方向:送信、IPv4、tcp、ポート:80、宛先:169.254.254/32
2送信IPv4tcp4430.0.0.0/0仮想ルータに割り当てられるグローバルIPアドレスの確認や、SQL*PLUS等のインストール、OSのセキュリティパッチを配布するサーバへのアクセス等のために設定します。
※設定やインストール後に、0.0.0.0/0 に対する 443/tcp の送信のルールを削除してもかまいません。
3送信IPv4udp530.0.0.0/0DNS を参照するために必須の設定です。
※この設定は削除できません。

  (b) K5 DB(Oracle) に接続するための設定例

No
方向
IPバージョン
プロトコル
ポート
宛先
備考
1送信IPv4tcp1521129.191.1.1/32作業手順①で作成した、サービス・インスタンスのパブリックIPアドレスを確認し、セキュリティグループの宛先にCIDR形式で設定します。

  ポート1521:OracleNet
  ポート21:ftps

※本資料では、例として、パブリックIPアドレスを 「129.191.1.1」 と定義します。
2送信IPv4tcp21129.191.1.1/32

※K5 DB(Oracle) のサービス・インスタンスのパブリックIPアドレスは、以下のように確認できます。


  (c) その他の設定例
    必要に応じて、以下の設定も行ってください。
    宛先については、 0.0.0.0/0を指定していますが、必要に応じて変更してください。
    また、セキュリティグループを追加する場合は、ファイアーウォールの設定も合わせて見直してください。

No
方向
IPバージョン
プロトコル
ポート
宛先
備考
1送信IPv4udp123
0.0.0.0/0
NTPサーバ:時刻を同期するための設定
2送信IPv4tcp16880.0.0.0/0Windowsライセンス認証 (KMS):ライセンス認証するための設定
3送信IPv4tcp85300.0.0.0/0WSUS (Windows Server Update Services) サーバ:WSUSを利用するための設定
※詳細については、関連資料「FUJITSU Cloud Service K5 マニュアル」の IaaS 機能説明書の「付録A.18」を参照してください。
4送信IPv4tcp33890.0.0.0/0リモートデスクトップを利用するための設定
5受信IPv4tcp33890.0.0.0/0リモートデスクトップを利用するための設定
6受信IPv4tcp800.0.0.0/0Web/APサーバとして利用するための設定
7受信IPv4tcp4430.0.0.0/0Web/APサーバとして利用するための設定



 (2) 作業手順⑧ファイアーウォールの設定
   以下の内容で設定します。

No
ルール名称
プロトコル
IP種別
アクション
送信先アドレス
(DESTINATION)
送信先
ポート
送信元アドレス
(SOURCE)
送信元
ポート
備考
1http_oktcp4allow80192.168.1.0/24構築時は、K5仮想サーバのIPアドレスは配備するまでの間は不明であるため、サブネットのIPアドレスを設定します。
※この例では 「192.168.1.0/24」 を設定しています。
仮想サーバ配備後、K5仮想サーバのIPアドレスを設定します。
2https_oktcp4allow443192.168.1.0/24
3oraclenet_oktcp4allow129.191.1.1/321521192.168.1.0/24129.191.1.1/32」 は、作業手順①で作成したK5 DB(Oracle) のインスタンスのパブリックIPアドレスです。
Oracleクライアント並びにFTP(パッシブモード)の通信を許可します。
4ftps_oktcp4allow129.191.1.1/3221192.168.1.0/24
5ftps_dat_oktcp4allow129.191.1.1/3230020-30030192.168.1.0/24
6dns_ok1udp4allow53



 (3) 作業手順⑪仮想ルータに割り当てられるグローバルIPアドレス確認
   K5 IaaS上の仮想サーバから、curlコマンド等を使用してグローバルIPアドレス確認サイトへアクセスし、仮想サーバのSNAT用で仮想ルータに割り当てられるグローバルIPアドレスを確認してください。

  • グローバルIPアドレスの確認サイト例
  • curl コマンドでのグローバルIPアドレスの確認例
    下記のコマンドを入力すると、下記のサイトのアクセス元のグローバルIPアドレスが表示されます。



 (4) 作業手順⑫アクセスルールの変更
   以下の内容で設定します。


   デフォルトでは、全てのアクセスルールが無効 (アクセス不可) の状態となっております。
   また、アクセスルールの設定対象はバージョン、エディション、ノード構成によって異なります。
   以下を参考に、必要なポートに対してのみアクセス許可を設定し、アクセスルールを有効化してください。

バージョン
エディション
ノード
構成
FTPS
制御
FTPS PASV
データ転送
DBaaS
Monitor
EM
Database
Control
DB
Listener
DB
Listener
EM
Express
ONS
2130020~3003044311581521152255006200
ftpsftpshttpshttpsOracle NetOracle NethttpsOracle独自
11gR2SEシングル
EEシングル
EE_HPシングル
EE_EPシングル
EE_EPRAC
12cR1SEシングル
EEシングル
EE_HPシングル
EE_EPシングル
EE_EPRAC
12cR2SEシングル
EEシングル
EE_HPシングル
EE_EPシングル
EE_EPRAC



メリット・効果

K5 DB(Oracle) パターンを利用した場合のメリット・効果は以下の通りです。

  • 特別な知識・スキルがなくても、迅速かつ簡単に Oracle Database を利用可能



注意事項

  • 本パターンは2017年6月時点のK5(IaaS)で動作検証しています。

  • K5 DB(Oracle)の契約について
    • K5 DB(Oracle)は、「利用者」が契約することが前提となっています。
    • 「契約者」=「利用者」でない場合、オラクル社との調整が必要となるため、弊社営業にお問合せください。
No お問合せが必要となる利用例 本来の契約者
K5 DB(Oracle)を利用して SaaS を提供 サービス利用者
親会社がシステムを提供、関連会社がシステムを利用 関連会社



その他

クライアントからデータベースへの接続方法

 (1) 接続記述子の確認

  • K5 DB(Oracle)ポータルにログインします。
  • 「インスタンス」画面で、作業手順①で作成した「インスタンス名」をクリックします。
  • 「インスタンス詳細」画面のデータベース情報に記載されている「接続記述子」を確認します。



 (2) 簡易接続

  • 以下の内容を確認し、クライアントからコマンドを実行し、データベースに接続します。
    クライアントが WindowsOS の場合は、コマンドプロンプトから、UnixOS の場合はターミナルなどから実行して下さい。
項目 説明
ユーザ名 systemユーザでログインする際のユーザ名は、「system」になります。
パスワード サービス・インスタンスを作成した際に設定したパスワードになります。

sqlplus <ユーザー名>/<パスワード>@<パブリックIPアドレス>:<ポート番号>/<SID、又はPDB名>.<アイデンティティ・ドメイン>.oraclecloud.internal


  • 以下は例になります。

sqlplus system/password@129.191.1.1:1521/PDB1.a111111.oraclecloud.internal






関連資料

  • FUJITSU Cloud Service K5 マニュアル
    http://jp.fujitsu.com/solutions/cloud/k5/document/
    • サービスご紹介資料
    • IaaS 機能説明書
    • IaaS サービスポータルユーザーズガイド
    • IaaS APIユーザーズガイド
    • IaaS APIリファレンスマニュアル
    • IaaS HEATテンプレート解説書

  • FUJITSU Cloud Service K5 DB powered by Oracle® Cloud マニュアル
    /lib/jp/dbora/document/list/doclist_dbora.html
    • スタートアップ・ガイド
    • ユーザーズ・ガイド 第1部 ポータル/課金管理編
    • ユーザーズ・ガイド 第2部 サービス・インスタンス編
    • APIリファレンス 他

(2017年6月検証)